NST専門療法士を取ったのに、栄養指導が恋しい。管理栄養士のキャリアは難しい

私は病院で働く管理栄養士です。

病棟の栄養管理や栄養指導を経験したあと、NST専門療法士の資格を取得し、現在はNST(栄養サポートチーム)の一員として働いています。

資格を取得した理由は、もっと臨床栄養の知識を深めたかったからです。

病棟の栄養管理と栄養指導だけでは、経腸栄養剤や静脈栄養について学ぶ機会が限られます。患者さんの状態に合わせた栄養投与量や投与方法、栄養剤の選択などを学び、管理栄養士としてキャリアアップしたいと思っていました。

しかし、実際にNSTを担当するようになった今、私は栄養指導が恋しくなっています。

目次

NST専門療法士を目指した理由

病棟の栄養管理では、患者さんの食事摂取量や体重、検査値などを確認し、必要に応じて食事内容や栄養補助食品を調整します。

もちろん、それだけでも多くのことを学べます。

一方で、食事を十分に摂取できない患者さんに使用する経腸栄養剤や、静脈栄養について深く学ぶ機会は、それほど多くありませんでした。

経腸栄養剤にはさまざまな種類があります。

エネルギー密度、たんぱく質量、水分量、脂質の種類、食物繊維の有無など、それぞれに特徴があります。患者さんの病態や消化吸収能力に合わせて選択するためには、実際の症例を経験しながら学ぶ必要があります。

その知識を身につけたいと思い、NST専門療法士の資格を取得しました。

資格を取れば、より専門的な栄養管理に関われる。管理栄養士としてできることが増える。

そう考えていました。

実際にNSTを担当して感じたこと

NSTの対象になる患者さんは、全身状態が悪く、通常の食事を十分に摂取できない方が中心です。

私が勤務する病院では高齢の患者さんが多く、認知症のある方や、病状が重く意思疎通が難しい方も少なくありません。

若い患者さんであっても、脳梗塞などの後遺症によって会話が難しい場合があります。

NSTでは、患者さんの検査値や身体所見、投与されている栄養量などを確認し、医師、看護師、薬剤師などと栄養管理について検討します。

臨床栄養の知識を身につけるという意味では、とても勉強になります。

その一方で、患者さん本人と会話をしながら、その人の生活に合った方法を一緒に考える機会は少なくなりました。

「何を食べていますか」

「これなら続けられそうですか」

「前回から変わったことはありますか」

このような会話を重ねながら行う栄養指導が、私は思っていた以上に好きだったのだと思います。

NST専門療法士を取ったことを後悔している

今の率直な気持ちを言えば、NST専門療法士を取ったことを少し後悔しています。

資格そのものが不要だったとは思いません。経腸栄養や静脈栄養の知識は確実に増えましたし、病態をより深く考える習慣も身につきました。

NSTに参加しなければ経験できなかった症例もあります。

それでも、現在の仕事が自分の好きな仕事かと聞かれると、迷います。

私が本当に好きなのは、患者さんと話をしながら進める栄養指導です。

資格を取得したことで専門的な業務を任せてもらえるようになった反面、自分が好きだった仕事から少しずつ離れているようにも感じます。

「やりたかった仕事」と「キャリアアップにつながる仕事」が、必ずしも同じではない。

病院で働いていると、この難しさを感じます。

このまま進んだ先のキャリアも見えてしまう

NST専門療法士としての経験を積むためには、一定期間NST業務を続ける必要があります。

このまま数年間NSTを担当し、その後はICUなどで早期栄養介入管理加算に関わる業務へ配置される。

今の職場では、そのような道筋も見えています。

専門性を高めるという意味では、順調なキャリアなのかもしれません。

しかし、専門性が高くなるほど、自分の好きな栄養指導から離れていく可能性もあります。

資格を取得する前は、資格があれば選択肢が増えると思っていました。

実際には、資格があることで特定の役割を期待され、その仕事から離れにくくなることもあるのだと感じています。

それでも資格がキャリアを助けることはある

ここまで読むと、NST専門療法士を取らない方がよいという話に聞こえるかもしれません。

しかし、病院の体制によっては、資格が希望する仕事に近づくための大きな武器になります。

管理栄養士の人数が多い病院では、厨房業務、病棟業務、栄養指導、NSTなどの担当が分かれていることがあります。

特に給食業務を直営で行っている病院では、臨床業務を希望していても、すぐに厨房担当から異動できるとは限りません。

資格や学会発表など、臨床業務に取り組む意思が伝わる実績があれば、担当者を決める際に候補として挙げてもらいやすくなる可能性があります。

一方で、病院によっては1か月や3か月ごとに担当をローテーションし、全員がさまざまな業務を経験するところもあります。

資格がどの程度必要になるかは、病院の人員配置や運営方針によって大きく異なります。

そのため、資格を取るかどうかを考えるときは、資格の内容だけではなく、自分の職場で取得後にどのような役割を求められるのかも確認した方がよいと思います。

やりたい分野があるなら、医師との関係も大切

病院で希望する分野を担当するためには、資格を取得することだけが方法ではありません。

自分がやりたい分野を担当している医師と、日頃から連携しておくことも大切だと思います。

例えば、

  • 糖尿病に関わりたいなら、糖尿病・代謝内科
  • 透析患者さんの栄養管理をしたいなら、腎臓内科
  • 周術期の栄養管理をしたいなら、消化器外科
  • ICUの栄養管理に関わりたいなら、集中治療科

といったように、希望する分野の医師と仕事を通して信頼関係をつくっていきます。

医師から「この分野を一緒に担当してほしい」「管理栄養士にも参加してほしい」と栄養科へ話を持ちかけてもらえれば、科長や上司も配置を検討しやすくなります。

もちろん、ただ仲良くなるという意味ではありません。

依頼に丁寧に対応すること、必要な情報をわかりやすく伝えること、栄養面から役立つ提案をすること。その積み重ねによって、「この分野ならこの管理栄養士に相談したい」と思ってもらうことが重要です。

資格を取ることと同じくらい、周囲との連携や信頼関係もキャリアを左右するのだと思います。

資格を取る前に考えておきたいこと

これからNST専門療法士などの資格取得を考えている方には、取得後の働き方まで想像してみてほしいです。

  • その資格を取って、どのような仕事をしたいのか
  • 資格取得後、職場ではどの業務を任されるのか
  • その業務は自分が好きな仕事なのか
  • 資格を維持するために、どの程度の負担があるのか
  • 数年後もその分野を続けたいと思えるのか

資格はキャリアの選択肢を増やしてくれます。

一方で、「資格を持っているから」という理由で担当が固定される可能性もあります。

資格を取ること自体を目標にするのではなく、その先でどのように働きたいのかを考えておくことが大切です。

管理栄養士のキャリアに正解はない

私はNST専門療法士になったことで、経腸栄養や静脈栄養について多くのことを学びました。

その経験は、今後栄養指導へ戻ったとしても、決して無駄にはならないと思います。

食べられなくなったときの栄養管理を知っているからこそ、食べられるうちにどのような支援が必要なのかを、以前より深く考えられるようになりました。

それでも今は、患者さんと直接話し、その人の生活や気持ちを聞きながら支援する栄養指導が恋しいです。

専門性を高めることと、自分が好きな仕事を続けること。

どちらを優先するべきなのか、私もまだ答えを出せていません。

資格を取ったからといって、その道だけを進まなければならないわけではありません。NSTで身につけた知識を栄養指導に生かす働き方もあるはずです。

キャリアアップとは、資格を増やしたり、より重症な患者さんを担当したりすることだけではないと思います。

自分がどのような患者さんと関わり、どのような支援をしたいのか。

迷いながらでも、自分なりの答えを探していきたいと思っています。

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この記事を書いた人

しろ|病院勤務の管理栄養士

大学病院で栄養管理に携わっています。
病態栄養専門管理栄養士/NST専門療法士。

外来栄養指導や入院患者さんの栄養管理を通して、
「続けられる食事」の大切さを日々感じています。

このブログでは、
現場経験をもとに、暮らしに活かせる栄養の知識を発信しています。

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