高齢になると「飲み込みにくい」のはなぜ?~見逃せない嚥下機能の低下とは~

「最近、食事中によくむせる…」
「お茶を飲んだだけで咳き込むことが増えた…」

こんなお悩み、ありませんか?
実はそれ、「年のせいだから」と見過ごしてはいけないかもしれません。

高齢になると、のどや舌、口の筋肉が衰えて、食べ物をうまく飲み込む「嚥下(えんげ)機能」が低下してしまうことがあります。
嚥下力の低下は誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)などの重大な病気のリスクにもつながります。


目次

飲み込み力が低下する主な理由

筋力の低下

嚥下には舌、のど、あご、顔など多くの筋肉が関わります。
加齢とともにこれらの筋肉が弱くなり、うまく食べ物を送り込めなくなります。

唾液の分泌量の減少

 唾液は食べ物を飲み込みやすくする潤滑剤。加齢や薬の副作用で分泌が減ると、飲み込みにくくなります。

感覚の鈍化

のどの奥の感覚が鈍ると、食べ物や飲み物が入ってきたことに気づくのが遅れ、むせたり誤嚥しやすくなります。

なぜ筋力が衰えるのか?~「飲み込む力」の土台が弱くなる仕組み~

使わない筋肉は自然と減る(サルコペニア)

高齢になると、日常生活の活動量が減りやすくなります。
特に、かむ・飲み込むときに使う筋肉(舌、のど、頬、あごなど)も使わなければどんどん衰えていきます。
このような筋肉の減少は「サルコペニア(加齢性筋肉減少症)」と呼ばれ、飲み込みにも大きく影響します。

栄養不足や病気の影響

高齢になると、食欲の低下や、歯のトラブル、薬の影響などで、必要な栄養が十分にとれなくなることがあります。
特に筋肉の材料となるたんぱく質が不足すると、全身の筋力低下が進みやすく、飲み込み力の衰えにもつながります。

神経の衰えも関係する

飲み込む動作は筋肉だけでなく、脳からの指令によって成り立っています。
年齢とともに神経伝達の働きが衰えると、筋肉の動きもスムーズにいかなくなり、嚥下機能が低下するのです。

嚥下機能が落ちたときの食事の工夫

飲み込みに不安がある方にとって、安全に・楽しく食べられる工夫はとても大切です。
中でもよく使われているのが次の2つの方法です。

🍽️ ① ペースト食(なめらかで飲み込みやすい)

ミキサーなどでなめらかにした、むせにくく、飲み込みやすい形状の食事です。
野菜や魚、肉、炭水化物も工夫次第でしっかり摂れます。

✅ 噛まずに食べられる
✅ 食品の形が残らず、安全
✅ 市販品や冷凍タイプもあり、手軽に導入可能

👇ペースト食の詳しい記事はこちら👇


🥄 ② とろみ食(飲み物や汁物にとろみをプラス)

水分や汁物はサラサラしている分、誤って気道に入りやすい=誤嚥しやすいのが特徴です。
その対策として使われるのが、「とろみ調整食品」。飲み物や汁物にとろみを加えることで、飲み込みがゆっくりになり、安全性が高まります。

✅ お茶や汁物がむせにくくなる
✅ 飲み込むタイミングをつかみやすい
✅ とろみの濃さも段階に応じて調整できる


まとめ

「年をとったらむせるのは当たり前」ではありません。
小さな変化に気づくことが、大きなリスクを防ぐ第一歩。

「最近、飲み込みにくい」と感じたら、食事の工夫から始めてみませんか?

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この記事を書いた人

病院で働く管理栄養士しろです。
このブログでは、
✅ 栄養の基本知識
✅ 毎日の食事に役立つヒント
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