年齢とともに「以前より食べられなくなった」「少し食べただけでお腹いっぱいになる」という声をよく聞きます。
実は、高齢になるほど、たんぱく質がとても大切になります。筋肉の量を保ち、体力を維持し、風邪や病気への抵抗力にも関わる栄養素だからです。
でも、食が細いと「たくさん食べなきゃと思うと苦痛」ということも…。
そこで今回は、少量でもしっかりたんぱく質を摂るための工夫を、管理栄養士の目線でご紹介します。

なぜ高齢者にたんぱく質が必要?
高齢になると、自然に筋肉が減ってしまう「サルコペニア」や「フレイル(虚弱)」といった状態になりやすくなります。このような状態になると、転倒しやすくなったり、体力が低下して寝たきりの原因になることも。
たんぱく質は、筋肉の材料になるだけでなく、傷の治りを早くしたり、免疫力を支えたりする働きもあるため、健康な毎日を送るうえでとても重要なのです。
食が細い方におすすめの工夫
✅ たんぱく質「密度」を意識する
少ない量でもしっかり栄養をとるには、「たんぱく質の密度が高い食材」を選ぶのがコツです。
手軽で食べやすいおすすめ食材:
- 卵1個 → 約6g
- 納豆1パック → 約7g
- ツナ缶(1缶)→ 約10g
- ちくわ2本 → 約7g
- ささかま2枚 → 約6〜7g
- サラダ豆50g → 約4〜5g(豆の種類により異なる)
- 豆腐(半丁)→ 約5g
- 牛乳(コップ1杯)→ 約6.6g
- ヨーグルト100g → 約4g
どれも噛みやすく、料理にアレンジしやすいものばかりです。
✅ 食事+おやつで「こまめに補う」
一度にたくさん食べるのが難しい方には、食事にこだわらず「間食」も活用するのがおすすめです。
10時と15時、寝る前などタイミングを決めて間食をとり、1日合わせて十分な栄養をとりましょう。
・おやつにチーズやヨーグルト
・スープに豆腐やサラダ豆を追加
・ちくわを輪切りにして卵焼きに混ぜる
・寝る前に温めた牛乳を飲む など
市販の便利アイテムを活用しよう
食事で足りないたんぱく質を補いたいとき、栄養補助食品がとても役立ちます。
おすすめ商品:
- メイバランス(明治)…飲みやすく栄養バランス◎
- アイソカル クリア(ネスレ)…透明でさっぱりしたジュース感覚で飲める
- クリミール(大塚製薬)…甘い味が好きな方に人気
これらは食欲がない時や体調が悪い時にも摂りやすく、たんぱく質・カロリーも補えるので、在宅介護の場でもよく使われています。
たんぱく質がとれる簡単レシピ
少しの工夫で、食事にたんぱく質をプラスできます。
主菜だけでなく、副菜にもたんぱく質のとれる食材を取り入れましょう。
- たまご豆腐入りスープ:口当たりなめらかで飲み込みやすい
- ツナとサラダ豆のポテトサラダ:食感のバランスも◎
- ちくわのチーズ巻き焼き:塩気があり食欲が増進される
- ささかま入り野菜炒め:やさしい味わいで食べやすい
- 温めた牛乳+プロテインパウダー:栄養強化ドリンクに変身
どれもやさしい味で、介護食にもぴったりです。
おわりに
「食が細くなったから、無理に食べさせるのが心配…」という声も多く聞かれます。
でも、無理に量を増やす必要はありません。少しの工夫で、少量でもしっかりたんぱく質をとることは十分可能です。
大切なのは「おいしく、楽しく、無理なく続けられること」。
毎日の食事が、元気な体と心をつくる力になりますように。