年齢とともに「以前より食べられなくなった」「少し食べただけでお腹いっぱいになる」という声をよく聞きます。
実は、高齢になるほど、たんぱく質がとても大切になります。筋肉の量を保ち、体力を維持し、風邪や病気への抵抗力にも関わる栄養素だからです。
でも、食が細いと「たくさん食べなきゃと思うと苦痛」ということも…。
そこで今回は、少量でもしっかりたんぱく質を摂るための工夫を、管理栄養士の目線でご紹介します。

なぜ高齢者にたんぱく質が必要?
年齢を重ねると、「サルコペニア(筋肉減少症)」や「フレイル(虚弱)」といった状態になりやすくなります。これは、加齢によって筋肉量や筋力が自然に落ちてしまう現象で、放っておくと転倒や骨折、さらには寝たきりの原因にもなり、要介護状態に移行するリスクが高まります。
そんなときに大切なのが「たんぱく質」。
たんぱく質は筋肉の材料になるだけでなく、傷の修復を早めたり、病気から体を守る免疫力を支えたりと、体の元気を保つうえで欠かせない栄養素です。
特に高齢になると、食が細くなって十分にたんぱく質を摂りにくくなる傾向があるため、意識して取り入れることがとても大切。
つまり、たんぱく質は 「動ける体」と「元気な毎日」を守る栄養サポーターなのです。
食が細い方におすすめの工夫
✅ たんぱく質「密度」を意識する
少ない量でもしっかり栄養をとるには、「たんぱく質の密度が高い食材」を選ぶのがコツです。
これは、少量でもたんぱく質をしっかり摂取できる=栄養効率のよい食材を選ぶということ。
たとえば、豆腐や卵、納豆、魚、鶏むね肉、チーズ、ギリシャヨーグルトなどは、エネルギーやたんぱく質がギュッと詰まった頼れる食品です。
食が細い方でも食べやすく、調理も簡単なものが多いので、毎日の食事に取り入れやすいのも魅力。
食材の選び方をちょっと工夫するだけで、体づくりをしっかりサポートできます。
おすすめ食材のたんぱく質量
- 卵1個 → 約6g
- 納豆1パック → 約7g
- ツナ缶(1缶)→ 約10g
- ちくわ2本 → 約7g
- ささかま2枚 → 約6〜7g
- サラダ豆50g → 約4〜5g(豆の種類により異なる)
- 豆腐(半丁)→ 約5g
- 牛乳(コップ1杯)→ 約6.6g
- ヨーグルト100g → 約4g
✅ 食事+おやつで「こまめに補う」
一度にたくさん食べるのが難しい方には、3食にこだわらず「間食」も活用するのがおすすめです。
10時と15時、寝る前などタイミングを決めて、食事を5~6回に分けるイメージで間食をとり、1日合わせて十分な栄養をとりましょう。
・おやつにチーズやヨーグルトをとる
・スープに豆腐やサラダ豆を追加
・寝る前に温めた牛乳を飲む など
市販の便利アイテムを活用しよう
食事で足りないたんぱく質を補いたいとき、栄養補助食品がとても役立ちます。
おすすめ商品:
- メイバランス(明治)…飲みやすく栄養バランス◎
- アイソカル クリア(ネスレ)…透明でさっぱりしたジュース感覚で飲める
- クリミール(大塚製薬)…甘い味が好きな方に人気
これらは食欲がない時や体調が悪い時にも摂りやすく、たんぱく質・カロリーも補えるので、在宅介護の場でもよく使われています。
たんぱく質がとれる簡単レシピ
少しの工夫で、食事にたんぱく質をプラスできます。
主菜だけでなく、副菜にもたんぱく質のとれる食材を取り入れましょう。
- たまご豆腐入りスープ:口当たりなめらかで飲み込みやすい
- ツナとサラダ豆のポテトサラダ:食感のバランスも◎
- ちくわのチーズ巻き焼き:塩気があり食欲が増進される
- ささかま入り野菜炒め:やさしい味わいで食べやすい
- 温めた牛乳+プロテインパウダー:栄養強化ドリンクに変身
どれもやさしい味で、介護食にもぴったりです。
おわりに
「食が細くなったから、無理に食べさせるのが心配…」という声も多く聞かれます。
でも、無理に量を増やす必要はありません。少しの工夫で、少量でもしっかりたんぱく質をとることは十分可能です。
大切なのは「おいしく、楽しく、無理なく続けられること」。
毎日の食事が、元気な体と心をつくる力になりますように。